【不思議体験記20】今は亡き愛情深い親方さんpart2

●情が深く、所員思いの男性
それから数日が過ぎた頃だった。いつものように作業をしていると、この前と同じく、人影のようなものが現れた。同様に、室内にチャイムは鳴っていない。

先日に見た人影と同じかどうかまでは判別できなかったが、視界のほとんど端の方に少しだけ見えるため、具体的にどのような人物なのかをハッキリととらえることはできなかった。しかし、人影とおぼしき人物像を成している姿形には変わりなかった。そちらに視線を向けると、やはり同じようにその人影は消えている。そこには誰もいない状態なのだ。

それからさらに数日がたった時だった。

同じように作業中、また執務室の入口の前に人影が現れたように見えた。この時も、相変わらずチャイムは休憩中のままであり、静かな執務室内であったことは言うまでもない。

このようなことがここまで続くと、これはもしかしたら私自身の単なる思い込みからくるもので、その思い込みから生じた目の錯覚ではないだろうか?とも思えてきた。それに、あまりにもこういったことを意識的に「想像」してしまうと、ある意味で、脳内では本当に「創造」してしまう脳内現象が発生するおそれも考えられたため、あまり自己意識が過敏にならないよう、冷静につとめた。

ところが、その日はいつもと違っていたのだった。

その人影の気配が、いつもより長くそこにいるように感じられたのだ。その場所から特に動く様子はなく、何をするでもなく、じっとそこにとどまっている、というようにも思えた。

ならばと思い、今回も視界からなるべくはずさぬよう、視線だけをすばやくそちらへ向けたところ、驚くべき光景が目に飛び込んできた。

なんとそこには、見知らぬ男性が立っていたのである!

その男性の具体的な容姿は、紺色系の上下の作業着を着用し、髪は短く白髪があり、身長は160?ちょっとで、見た目はいかにも職人さんとも思える男性が、こちらを見ていたのである。やはりこの時も、ごくわずかな一瞬の出来事であり、この人物像を認識した直後には視界から消え去った。

私(……今のは⁉)

と、心の中で驚いたが、しかし一切の恐怖を感じることはなかった。それどころか、とても情が深く、思いやりがあってまるで親方のように面倒見がいい存在にも思えたのだった。

そして、すぐにわかったことがある。「ああ、今の感じは、ここの所員のみなさんを指導的な役割で見守ってくれている存在なんだな」と。

その数日後も、この親方風の霊的存在の男性がコピー機の前におり、所員の仕事ぶりを見ている様子が、やはりこれも一瞬ではあるがとらえることができた。コピー機の前にいて、所員の「心」という見えない部分に、気づきやアドバイスをメッセージとして送っているようにも感じられた。

この時点ですでに2回、実在する人間ではない、ましてやその顔にも全く身に覚えがない、霊的存在とも言える特徴ある男性像を、どちらも一瞬ではあるが目撃したことを考えると、この現象は私の思い込みからくる錯覚ではなく、ここで本当に起こっている現実の出来事で間違いないと、私は心の中で受けとめた。

この親方風の男性霊が、どのようなご縁があってこの事務所に来られているのかは全く知る由もないが、「愛情ある指導者的役割」というお役目を果たされているその姿に、大変素晴らしさを感じることができた。

※part3へ続く

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