※前回のあらすじ
土の中から突如として現れたお地蔵様のお陰により、過酷な崖のぼりをなんとかクリアできました。
そして、300人以上もいた修行者の中から、頂上まで登り切った者は私を含めてたった3人しかおらず、はるか先を見てみると、女大師の姿をみつけることができました。
共に歩む同志となった我々は、再び女大師の後を追いかけたのでした。
視界のはるか前方を行く女大師の後を追い、これ以上引き離されぬようにと息を切らせながら必死になって険しい山道を進んで行くと、急に場面が変わったかのように広い場所に出てきました。どうやら、私たちは山を下りられたようです。
そこには民家が5~6軒ほどあり、その先には線路が複数敷かれ、線路の中央には鉄道の管理事務所らしき建物がありました。
その事務所の窓からは管理員が2人ほど、線路や鉄道運行に異状がないかを厳しくチェックしている様子がうかがえました。
その時、女大師が管理員の目をかいくぐり、線路をひょいひょいと渡ってあっという間に管理事務所の横にある部屋のドアから中に入っていったのです。
私「すごい!いとも簡単に建物の中に入っていった。でも私たちにあそこまでできるだろうか」
2人の管理員が厳しく目を光らせている中、女大師のようにそこをいとも簡単に逃れて建物の中に入ることなど、とても無理だろう・・・と我々はそう思いました。
さらには、「線路を横断中に見つかったらその時点で修業が終わり」ということも直感でわかりましたので、どんなことがあっても見つかるわけにはいきません。どうにかならないものかと、我々はお互いに慎重に案を模索しましたが、なかなかいいものが浮かばず、非常に困った状況におちいってしまいました。
あれだけきつい崖のぼりをクリアし、険しい山道を走り抜けてきたのに、ここで終わってしまうのかと、半ばあきらめかけたその時・・・思いもかけない出来事が起こったのです。
何が起こったのかと言いますと、まず管理事務所に電話がかかってきたようで、2人のうちの1人が電話にでました。さらに数秒後、今度は事務所に来客があったようで、もう1人の管理員がその来客に対応しだしたのです。
なんと、ほんのわずかな時間で、2人の管理員の厳しい目が一瞬にしてゆるんだのです。
そんなことがありえるのか⁉と、我々は顔を見合わせましたが、「いや、これは大チャンスだ。今しかない!」と気持ちを切り替え、猛ダッシュで管理事務所の横にあるドアめがけて走り出しました。
私たちがいた場所からドアまでの距離は、100m~150mぐらいはあったと思います。150mって、それほど長い距離ではないように感じますが、すでに我々は崖のぼりと山道の走破でかなりの体力を消耗していましたので、たとえ夢の中であっても、走っている途中はとても疲れているのがなぜかよくわかるのです。この辺がとてもリアルでしたね~。
ただし、管理員たちの一瞬の隙をついたとはいえ、いつ見つかってもおかしくない状況に変わりはありません。見つかったら、一発でアウトです。
私たちはかなり大胆な行動に出たわけですが、正直なところ、走りながら「見つからずに行けるだろうか?」、「本当にいけるのか?」という不安を抱いていました。
けれど、ここまできたらもう後戻りはできません。迷っているひまなどありませんでしたので、とにかくドアに向かって思いっきり走りました。
そして・・・。
我々は管理員の目をかいくぐり、息を切らせながら無事に建物の中に入ることができたのです。
そこに入ると、周りはただの壁しかない一本の通路が数十メートルほど伸びていました。
よし、ここを抜けよう!と思い、向こう側の扉まで走って行った時に、インスピレーションが入ってきました。
- 時に仏は、必要な時に、必要なはからいごとをする -
お大師様の言葉が心に響きました。
そうだったんだ、管理員たちが急に忙しく対応に追われたのは、やはりお大師様がおとりはからいをしてくださったんだと、しみじみとその有難さを実感しました。
出口までたどり着き、そこを抜けてみると、何とも懐かしい雰囲気のあるお店の中になっていました。
現実の私としては来たことはありませんが、私の魂といいますか、心の中では今までに何度も訪れたことがあるお店といってもいいほど、居心地がいい場所だったのです。
私「あ~、ここだったのか、このお店にたどり着いたのか~」
そう言ってカウンターの席に座ると、祝杯をあげようということになり、同志たち2人はビールを注文していました。私は「ジントニックで!」と注文していました。
※普段からお酒を飲まない私がなぜジントニックを注文したのかが意味不明です(笑)。
そしてお酒がそろい、3人で乾杯🍻しました。
乾いたのどを潤し、ふう~っと一息ついたところで、同志たちにこう尋ねてみました。
私「先ほどのお大師様は・・・?」
同志たちは、無言のまま首を横に振りました。
どうやら、私たち3人だけがお大師様の難行を達成したようで、ここまで来ること自体がすごいことだそうです。そう感じた時に、自分は頑張ったんだな~と、この上ないほどの達成感と幸福感に包まれました。
ここで、目が覚めたのでした。
夢の中とはいえ、〝女大師〟として現れた弘法大師空海さんと一緒に修業をするという、奇想天外な内容ではありますが、逆に夢の中だからこそあり得ると言っても過言ではないかもしれません。
山岳修行の出発時には、見たこともないほどの大きなお地蔵様が立っており、その後の崖のぼりで苦戦している私の目の前に、土中に埋まったままの姿で現れ、手助けをしてくださいました。
そして、名も知らぬ顔も知らない2人の心強い同志たちと出会い、鉄道の管理員たちの厳しい目をかいくぐる試練に挑みましたが、私たちでは突破することは非常に困難でした。
あきらめかけたその時、お大師様のおとりはからいにより、管理員の隙をついて無事に最後の扉までたどり着くことができ、修行を達成することができました。
- 時に仏は、必要な時に、必要なはからいごとをする -
なんと心に残る夢でしょうか。お大師様をはじめ、御仏の慈悲とおとりはからいに、心から感謝でいっぱいとなりました。
夢から覚めた後、「凄い夢だったな~」と思うのもつかの間、直後に「・・・うわ、なんか体がめちゃくちゃ疲れてる。重い・・・」と、もうね、ほんとにグッタリ感がハンパなかったんですよね。
ただ、ちょうどこの日は仕事が休みだったのでラッキーでしたけどね!
・・・ん?しかし偶然にも次の日が休みという時にこういう夢を見るって・・・。
もしかして、お大師様はそれを知っていて、「おぬし、明日は仕事が休みじゃな?ならばちょうどいい。修業せい!」ということだったのかもしれません( ;゚Д゚)ェェ..
何はともあれ、苦しくもあり、そして慈悲深きもある素晴らしい修行をさせていただきまして、ありがとうございました。
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