束縛から自由を与えるホンモノの存在

部屋にあるイスにこしかけて
窓越しに外を見ようとした時に
窓ガラスと網戸の間に
虫が一匹いるのに気がついた

その虫は
窓ガラスから飛び立っては網戸に張り付き
網戸をちょこちょこ歩いてはまた飛び立って
窓ガラスに張り付くということを
何十回と繰り返していた

こんなことは日常の中の
ごく一部のどうでもいい
そしてたわいもない出来事の一つなのだろう

だが次の瞬間のことだった

急に私の脳裏に
ある言葉が浮かんだ

「壁一枚に阻まれた人間もいる」と。

突然どうしたんだと自分に驚いた
時が一瞬止まったようにも思えた

小さなその虫にとって窓の外は
それはそれはまだ見たことがない
広大な世界が広がり
かつ経験したことがない
生物としての命の大きな躍動が待っているだろう

それがすぐそこにあるのに
見えない〝透明な壁​〟がたった一枚あるせいで
そこから先に行けないのだ

その虫も行きたかろう
窓の外へ
その虫も飛びたかろう
まだ見ぬ地上の舞台へ

私はおもむろにイスから立ち上がり
窓と網戸を少し開けてみた

その虫は
初めはウロウロとしていたが
隙間をみつけるやいなや
一瞬で私の視界から消え去るように
どこへともなく勢いよく飛び去っていった

束縛から抜け出るための
たった一つのその隙間のおかげで
自由に羽を広げられたのだ

それは虫に限らず
私たち人間にも言えることかもしれない

それを与えてくれるホンモノが
きっとひとりひとりに
どこかに存在するのだろう

そのホンモノに
いつか出会える日が来ることを信じて

◎コメント、応援メッセージはこちら

  1. ふみ より:

    ブログランキングから来ました。

    虫が逃げられて良かったです。
    私もなるべく外に逃がすようにしています。

    殺すのは罪悪感を感じてしまうので・・・

    • クニ クニ より:

      ふみさん

      ブログランキングからお越しいただきありがとうございます。

      ふみさんも同じく外に逃しているのですね。

      小さな虫にも平等に与えられた命。

      それを私たちの手で生かしてあげたいと思っています。