【不思議体験記12】霊と力比べをする

今から約8年前のことだが、福島にある美術館で古代エジプトのミイラ展が開催されていたので観に行ってきた。

私は普段、これといってあまり展示会などには足を運ぶことは少ないのだが、しかしこのミイラ展に関しては、展示案内のパンフレットを見た時に「行ってみたい!」となぜかそう思ったことがきっかけで、出かけることにした。

実際にミイラを見たのはこの時が初めてで、本物を間近で見ることができた感動、そしてその迫力にも圧倒され、とても印象に残る展示会に満足して美術館を後にした。

それから3日後のことである。全く予想もしていないような不思議な出来事が、私の身に起こったのである。それは、真夜中に突然訪れた。

私はすでに眠っていたが、ふと気がつくと部屋の障子戸が閉まっているにもかかわらず、そこをスッとすり抜けるかのように何者かが部屋に入ってくるのがわかった。

なぜあの時に、それまでぐっすりと眠っていた自分が、障子戸をすり抜けるかのように「何者」かが侵入してきたことに気がついたのかは理解できないのだが、家族のだれかが部屋に入ってきたという気配ではなく、これは何らかの霊的な存在であるということを察知した。

部屋は電気が消えていたため、だれが入ってきたのかまでは暗くてよく見えなかったが、どうやらその者(霊)は私の足元にいてこちらの様子をうかがっているようだった。

暗い部屋で、お互いが沈黙の対峙をする最中、なんとその霊はいきなり私の布団を引っ張り出し、少しずつずらし始めたのだった。

私も引っ張られては困るので抵抗し、お互いがまるで布団を綱引き代わりにするようにして引き合い、拮抗状態になった。

するとその霊は引っ張るのをやめ、私の耳元まで来て「うごかね、うごかね、うごかね」と3回言い、音も無くそのまま消え去った。

当初は、エジプトのミイラ展を観に行った影響があるのかもしれないと思ったが、しかし出てきた霊は日本人で、かつ東北特有のなまりがあり、年老いたおじいちゃんのような声だった。

この時は金縛りにはならなかった。

●自分は「手」ではなく、あるもので布団を引っ張っていたことが判明!
これについて後から思い返してみた時に、非常に不可解な点があることに気がついた(もっとも、夜中に霊が現れて、お互いに綱引きならぬ布団を引き合い、耳元で言葉をささやかれた、ということ自体が不可解なことではあるが…)。

それは、お互いに布団を引っ張り合っていた時のことである。考えてみると私はその直前まで寝ていたわけであり、全くの無防備な状態だった。その寝ている状態で霊が現れ、いきなり布団を引っ張り出したため、私は?寝ていた時と同じ状態のまま?抵抗したわけである。

すなわち、急に布団を引っ張り出した霊に対して、私は全く動くことなく、ましてや布団をつかむこともなく、なんと自らの「意思」だけで、布団を引っ張り返していたのである!

それなのに、相手が引っ張るその力にも負けないほどの力が出せていた、ということが不思議でならないことである。

霊と対峙する時には、自らの意思というものが通用することを体験できた時だった。

【補足】

夜中、私の部屋に「霊」といわれる存在が侵入してきて、急に布団を引っ張り出したかと思ったら「うごかね」と3回言い放ってそのまま消え去ったという、一体何の意味があってそんなイタズラのようなことをしたのか、今でもさっぱりわからない奇妙な出来事を体験しました。

私の耳元で霊が言った「うごかね」という言葉は、標準語で言うところの「動かない」という意味です。物を動かそうとしたけれど、それが全然動かない場合などに使います。

この現象が起こったきっかけは何だろうかと考えた時に、真っ先に思い浮かぶのは、やはりエジプトのミイラ展を観に行ったことが影響したのではないか、ということです。

美術館で迫力ある生のミイラを間近で見たことにより、目には見えない霊的エネルギーの様なものに自分が感化されてしまい、それによって3日後の夜に奇妙な出来事が起こった(あるいは誘発された)のかもしれないと思われますが…

しかし、このエジプトのミイラと、明らかに東北なまりのある、しかもその声の質からして「おじいちゃん」と推測できるような年齢層の人物との間には、特に際立った有因性はどこにも見当たらず、ミイラ展から3日後という近々の間で起こった偶発的な出来事なのだろうと、断定はできませんが現時点では後者の見方を強めています。

何よりも謎なことは、突如現れたおじいちゃん霊は、「なぜ私の布団を引っ張ったの?」ということです。

実際に、おじいちゃん霊に布団を引っ張られましたので、わずかではありますが布団が動きました。そのため、もしもこのまま引っ張られようものなら、場合によっては布団を丸々取られてしまい、霊障のような災いが降りかかるのではないかと、一瞬恐怖心がよぎりました。

その恐怖心で、体を動かしたり起き上がるということができなかったため、心の中で「おじいちゃん霊が引っ張る方向とは逆方向に働く力」の念いを強くイメージしました。

具体的に言うと、手で布団をグッとつかんでいるように心の中でイメージをし、そのまま布団を自分の方へと引き寄せるような感じです。これを、たった一瞬で終わらせるのではなく、そのイメージを保ったまま持続させました。

すると、布団の動きがピタリと止まったのです。言い方を変えると、まさに綱引きでお互いの力が拮抗状態にある時に、綱がピンと一直線になったまま動いていない、あの状態になったのです。

その間、約30秒ほどだったでしょうか、短いようで意外に長かったと感じました。

そうしていると、布団を引っ張る感触がフッと抜け、急に私の耳元で「うごかね、うごかね、うごかね」と聞こえたかと思うと、そこから一切の気配が無くなりました。

おじいちゃん霊が、私の足元から耳元へ移動した時や、3回言葉を発した直後に消え去った時も含めて、歩く音や何かに触れた音、部屋を出ていく音なども全くしませんでした。忽然と、その場から消えたのです。このことからも、家族のだれかが部屋に立ち入ったのではなく、やはり霊と言われる存在の仕業であったと言えます。

そして、心の中で思い描くイメージというものが、使い方(念じ方)次第によっては、今回のケースのように目には見えない作用が働くことを実体験した出来事でした。

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